損害保険鑑定人試験の3級は、鑑定人にとっていわば登竜門的な存在です。しかし、「損害保険鑑定人試験対策」のような”資格試験に特化した教科書や問題集がない”ため、勉強法についてはかなり困る試験です。
ちなみに、試験を実施している(一社)日本損害保険協会のQ&Aを確認すると…
Q 鑑定人試験、特に3級鑑定人試験は、3科目(「建築免除」の方は2科目)で60点以上でないと合格できませんが、何か効率的な勉強方法がありますか?
A 勉強方法は、人によって異なるので、一概にはいえませんが、過去問題を勉強し、各試験科目の出題傾向の特色等を理解しながら、勉強する方法が良いと思います。
https://www.sonpo.or.jp/exam/kanteinin/faq/shiken.html
試験勉強のやり方は人それぞれだと思いますが、結論としては「過去問を解いて、教科書を読む」を繰り返すことが基本となると思います。
しかし、それだけを言われても未経験・未学習の分野であれば、いまいちピンとは来ないでしょう。そこで、このページでは私が過去問を5年分以上解いた経験をまとめます。参考になれば幸いです。
なお、試験の過去問と解答集は公式のWebサイトで公開されています。
保険・一般常識
この科目を勉強するには、(一社)日本損害保険協会が発行している教科書が必須です。なぜなら、問題に出てくる文章は、ほとんどこの教科書と同じ文章だからです。
この科目は多くが正誤問題です。しかも、教科書で載っている文章がほとんどそのまま出題文となっていることが多いです。
例えば、「教科書:〇〇が含まれる」→「問題文:〇〇は含まれない」など、純粋に「正or誤」を問う出題がされます。そのため、教科書を読めば読むほど得点に繋がりやすい科目です。その意味では、同じ意味の文章を、言い回しで回答者を混乱させる運転免許試験よりも、だいぶ素直です。
おすすめの勉強方法としては、過去問を大問1つごとに解いて、それに対応する教科書の部分を読む。これを繰り返すことです。過去問で新種保険に関する大問を解いたら、答え合わせしながら教科書の新種保険について読み直す、といった感じです。
あと、計算問題は毎年同じような内容で出題されているので、これは必ず解けるようにしましょう。

建築
日本損害保険協会が公式に認めている教科書を勉強するのも良いのですが、個人的には二級建築士の参考書を一読してから過去問を解くことをおすすめします。
3級の建築科目は、一級・二級建築士は免除となります。つまり、二級建築士の資格を保有できるほどの知識があれば問題がないとも、解釈できます。
だったら、認知度が高く、教材も豊富な二級建築士の勉強をとっかかりにしたほうが、公式教科書を何種類も読むよりも効率的ですよね。
実際に、この方法である程度試験内容はカバーできるので、おすすめします。
電気・機械
個人的に、一番問題だったのがこの科目。
過去問を最後まで解くとわかるのですが、オームの法則など電気に関する知識から始まり、テーパねじや歯車についてまで押さえることになります。
範囲が広いというのもそうなのですが、異なる分野の知識を習得しなければならないため、対策が難しい科目です。しかも、毎年のように出題箇所が違うのもクセモノ。
これについては、残念ながら私は効率的な学習方法は見いだせておらず、公式の教科書から試験範囲を一読→過去問→公式の教科書…というサイクルで得点につなげました。
独学でもイケるが、勉強しないと受からない
保険・一般常識の試験など特にそうなのですが、「書いてあることがそのまま出題される」ということは、勉強してきたかどうかがすぐに判断されるということになります。そして、この資格に特化した参考書や問題集もないため、「独学以外の方法で勉強できない」が正しいところです。だから、「独学でも受かるよ!」という言葉を「ならば簡単なのだろう。余裕なのだろう」と受け止めてはいけません(教訓)。
試験の主催である日本損害保険協会のQ&Aには、「3級の合格率は20~30%」と記載されています。ちなみに、国家資格である「二級土木施工管理技士」の合格率は、平成25年以降30~40%程度を推移しています。
特化した参考書や問題集がなく、解答が公開されていても解説はない。更には、複数分野を広く勉強しなければならないという事実が、民間資格でありながら国家資格よりも低い合格率の原因であると見ています。
このことは、受験会場にいた二級土木施工管理技士の方も話していました。『国家資格のほうが難しいのでは?』と質問すると、「それでも鑑定人試験は受かる自信はない。過去問の解説書がないから、なぜ間違っているかを理解するのがひどく大変だった」とうなだれていました。
特化した参考書や問題集がないということは、過去問を繰り返し解く回数が物理的に削られるということです。
「民間資格で、みんな独学でとっているから」と侮ることなかれ。
そういった難易度の試験であることは念頭に置いておきつつ、勉強することが大事だと感じています。
コメント