火災保険に関する計算問題(解説)

毎年、保険・一般常識の試験科目で出題されている「火災保険の支払いに関する計算問題」。配点を確認しても9点を占めるなど、確実に抑えておきたい問題です(合格点60点)。

しかし、実際はパターンが決まっている問題ばかり出題されているため、一度覚えてしまえば得点に繋げやすい問題です。

このページでは、解き方・計算方法を掲載します。

目次

計算方法

結論を急ぐ方に、各計算方法を記載します。少し突っ込んだ解説が欲しい方は、後半まで読み進めていただければ幸いです。

損害保険金

(損害保険金) = (損害額) × (保険金額) ÷ (保険価額)÷0.8
※限度額:保険金額か保険価額の小さい方
※普通火災保険の場合、最後の0.8は不要

残存物取り片付け費用

(損害保険金) × 10%
※限度額:実際に払った「残存物取り片付け費用」

臨時費用補填金

(臨時費用保険金) = (損害保険金) × 30%
※住宅総合保険:1敷地内ごと100万円が限度
※店舗総合保険:1敷地内ごと500万円が限度

失火見舞金

(失火見舞金) = (被災世帯数) × 20万円

用語解説

解き方の解説に移る前に、最初に基本的な箇所・用語を覚えます。

出題が同じとは言え、何かの気まぐれで言い回しが変わって得点を逃すのは避けたいので、単語の理解を深めておきます。

保険金額

建物に対して、いくらまでの補償をするのかという金額。加入額。

例えば、「3000万円の価値の建物に対して、最大1500万円まで補償を設定する」となれば、1500万円が保険金額となります。

なお、保険金額に対して保険での支払額が保険金額を上回る計算結果が出た場合、保険金額が限度額となります

上記の例に当てはめれば、保険金額が1500万円に対して支払額の計算結果が2000万円だった場合、支払額は1500万円になります。

保険価額

保険の対象となっている物件が破損した時、最大で被る被害額を指します
要するに、建物が全部壊れたらこのくらいの金額になるので、最大で補償する金額はこのいくらになりますよというものです。

「全部壊れた時の金額」と言っても、どの時点の評価なのかで金額が異なります。新しく同じ建物を建てた時の金額(≒新築時点での建設費)を「新価(再調達価額)」、建築時点からの経年劣化による価値を差し引いた評価を「時価」と言います。

どちらを保険価額に設定するかで支払額は変わってきますが、この計算問題ではそんな突っ込んだことまで聞かれません。シンプルに「保険価額=建物の評価額」とだけ覚えておけばOKです。

保険価額はその建物にかけられる保険金額の最大値を指しますので、保険価額を超えて保険金額を設定することはできません(正確にはかけることはできなくはないのですが、支払われるのは保険価額が上限になるため意味がないのです)。

よって、3000万円の建物に対して、3500万円の補償をつけたとしても、支払われる金額は3000万円が最大となります。

臨時費用保険金

通常支払われる損害保険金は、原状復帰に必要な金額になります。そのため、復旧工事にかかる費用は保険金でまかなわれますが、その工事の間にかかる費用はそこに含まれていません。

工事の間にかかる費用とは、例えば修繕期間中の宿泊費など、工事の見積もりに乗らない支出です。これを補うのが臨時費用保険金となります。

失火見舞金

火事が発生すると、近隣の住宅も被害を受ける可能性があります。

しかし、もらい火で火災が広がったとしても、他人の物件の補償は行われません。他所の家はその家の火災保険を使うしかありません。出火原因が類焼だとしても、火災保険はあくまでも加入している物件しか補償されないのです。

その上、重大な過失がない場合、類焼してしまった物件に対して責任を負わなくてもよいと失火責任法により決まっています。

「燃やした原因はそちらなのに…」と思われてしまうのは明らかです。そこで、他所の家との関係性を保つ目的で、1世帯当たり20万円までが”火災保険の加入者”に支払われます。類焼の被害者にではありません

これが、失火見舞金です。

火災保険の支払額の計算

登場する単語が整理できたところで、解法解説に移ります。

出題される計算問題は大体4種類。

契約物件の被害に対する「損害保険金」壊れたものと処分するのにかかる費用をまかなう「残存物取片づけ費用保険金」損害を回復させるにあたって損害額以外にかかる費用を補填する「臨時費用保険金」契約物件以外に損害を与えた際に支払われる「失火見舞費用保険金」

加入している保険のタイプによって限度額など異なりますので間違えずに覚えましょう。

損害保険金

この問題は、最初に問われます。そして、その後の問題にも影響を与えます。確実に回答しておきたいところです。

「住宅火災保険」「住宅総合保険」「店舗総合保険」と、「普通火災保険(一般物件)」での違います。要するに、「普通火災保険(一般物件)」のみ異なります。

住宅総合保険・店舗総合保険・住宅火災保険

(損害保険金) = (損害額) × (保険金額) ÷ (保険価額)÷0.8
※限度額:保険金額か保険価額の小さい方

電卓を使って計算するとこのようになります。

最後に0.8で割っている部分が注意です。

普通火災保険(一般物件)

(損害保険金) = (損害額) × (保険金額) ÷ (保険価額)
※限度額:保険金額か保険価額の小さい方

普通火災保険の場合は、最後の0.8がなくなります。このため、明確に答えが変わってきますので注意しましょう。

残存物取片づけ費用保険金

(損害保険金) × 10%
※限度額:実際に払った「残存物取り片付け費用」

損害保険金額に10%をかけ、それが問題文中の「残存物の片付けにかかった金額」と比較するというものです。損害保険金の10%が限度額になります。

分かりにくいと思いますので、簡単な例を。
残存物取り片付けに500万円、損害保険金が300万円だった場合は「300万円×0.1=30万円」。
残存物取り片付けに50万円、損害保険金が800万円だった場合は「800万円×0.1=80万円だが、支払いした50万円が支払い」。

損害保険金の問題が正解しないと、こちらの問題も回答できないという問題です。選択肢に該当する金額がない場合は、そもそも損害保険金の計算自体間違っている可能性がありますので、見直しが必要です。

臨時費用保険金

(臨時費用保険金) = (損害保険金) × 30%
住宅総合保険:1敷地内ごと100万円が限度
店舗総合保険:1敷地内ごと500万円が限度

こちらも、損害保険金の計算結果が絡んでくる問題です。
いくら計算しても選択肢に合わない場合、限度額を選択してしまうのも方法かもしれません。外れる可能性は高いですが、限度額を問うてる問題でもあるので、全く可能性がないワケでもないからです。

失火見舞金

(失火見舞金) = (被災世帯数) × 20万円

住宅総合保険と店舗総合保険で解法は共通です。また、損害保険金の計算結果の影響も受けないため、求めやすい問題です。ただし、被災物件数ではなく、被災物件数である点は注意が必要です。

問題文で見るべきポイント

この問題は、シンプルに、機械的に、スピーディに解答することが望ましいです。保険の種類によって微妙な違いがあるものの、決められた計算式に数字を入れるだけ。悩む必要などないのです。

なので、問題文を見たときに要点を絞りましょう。問題用紙内の以下の項目に、下線を引いてしまうことをおすすめします。

1.「住宅総合保険」or「店舗総合保険」

2. 保険金額、保険価額、損害額、残存物取り片付け費用、世帯数

数字が整理できたら、あとは公式に突っ込み、限度額を確認するだけの簡単な問題です。焦らずしっかりと、正解を狙いましょう。

(補足)例題と解答例を用意しましたので、こちらもご参照ください。

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この記事を書いた人

30代の損害保険鑑定人。
ITや観光業など全くの別業種から転職。
カレーライスと味噌ラーメンが大好きな、地方出身の2児の父。

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